3年前の母の日の次の日、いつものように俺は会社へ行き、いつものように妻は、4歳と1歳の子供と一緒に自宅にいた。
夕方、妻が脳内出血を起こして、心肺停止状態で近所の人に発見され、救急車で駆けつけた救急隊の蘇生措置で心臓だけは動き始めた。
会社から病院に駆けつけると、脳のレントゲン写真を見せられ、出血が多すぎて手の施しようが無く、心肺停止状態も長かったので、回復する事は無いと告げられた。
医者からは、「長くないので、会わせたい人がいたら連絡して下さい。」と言われ、出来の悪いドラマでも見てるような錯覚に陥りながら、親戚、友人に連絡をとった。
次の日から、親戚や友人が入れ替わり立ち代り、病院へ来て、点滴が何本もぶら下がっているICUの妻の枕元にお見舞いに来てくれた。
俺は、入れ替わり立ち代り来る見舞い客に、妻の病状や、倒れる直前まで元気だったことなどを、説明してたのだが、最初は泣いちゃって途中で話が出来なくなってたのが、入れ替わり立ち代りくる見舞い客に何度も説明しているうちに、冷静に話せるようになってきた。
しまいには、何度も同じ事説明するのに疲れてしまい、紙に書くか、テープレコーダーに録音して聞かせようかなどと、考える余裕が出てきたころ、変な事に気が付いた。
変な事とは、見舞い客が重ならないのです。
一組目の見舞い客が帰るので、ICUの外まで見送ると、ちょうど二組目が到着した所なのです。
それが、次の見舞い客が来た時も、その次も・・・
次の日になっても変わらず、まるで、予約して時間をずらして見舞い客が来たように、全然重ならないのです。
俺も途中で気が付いて、見舞いに来た妻の友人にその事を話した後、その人とICUを出ると、義母が子供たちを連れて廊下の向こうから歩いて来るではありませんか・・・
「ほら、言った通りでしょう・・・」
妻の友人も来た時と、帰るときのあまりのタイミングにビックリしていました。
妻は、昔から変なところに気を使って、肝心なところがぬけてる、天然ボケな人だったけど、そこが、かわいらしくて、結婚したのだが、こんな時に気を使わんでもと思ったよ・・・
俺は病室の天井を見上げながら、
「そんな所で、気を使ってないで、体に戻っておいで・・・」
と何度も、呼びかけたのだが、一週間後に息を引き取った。
見舞い客が病室にいる時間なんて、まちまちなのに、ほとんど重ならなかったのは、今思い出しても本当に不思議だ・・・
もうすぐ命日なので、思い出して書いてみた。
不可解な体験、謎な話~enigma~ 38