じいちゃんがまだ若かった頃、嫁と、ある旅館に泊まった。
夜、じいちゃんがトイレに起きると、すっかり眠気が覚めてしまい眠れなくなった。
嫁さんは爆睡しており、起こすのもかわいそうなので、一人でお風呂に入ることにした。
そしてそこで見てしまった。あきらかに人間じゃない、透けた体の男が浴室に立っているのを。
男は手に刀を持っており、じいちゃんの気配に気づいたのか「誰だ」としゃべった。
しかし男は後ろを向いていたため、じいちゃんは目を合わせてはマズイと思い、あわてて自分の部屋に逃げ帰った。
布団の中で震えていると、廊下を誰かが歩いてくる音が聞こえる。
昔の旅館なので、床板がきしむのだ。そして、客室のふすまを開ける音。
「ここにはいない・・・」そして声は徐々に近づいてくる。
どうやらヤツは、客室を開けて一つ一つ確認しているようだ!!
じいちゃんはもう、生きた心地がしなかった。
声はじいちゃんの部屋にどんどん近づく。
「ここにはいない・・」声はいらだち、怒りがまじっている!
そしてついにじいちゃんの部屋のふすまが開けられた!
「 こ こ に も い な い !!! 」
・・・そしてふすまは閉められ、足音はしだいに遠ざかっていったそうだ・・・
この話を聞いたとき、その拍子抜けしたオチに、俺は不覚にも吹いてシマッタよ・・・。
ほんのりと怖い話13