知り合いの話。
峠道でいきなり土砂降りの雨に出くわし、近くのバス停に逃げ込んだ。
屋根はかなり狭かったが、まぁ何とかそれ以上濡れるのは避けられた。
すぐ横に先客がいた。身体を拭いながら話し掛ける。
こんな大雨は本当に鬱陶しいねぇ、と振ると次のような応えが返ってきた。
「・・・雨は好き・・・独りきりじゃなくなることが多いから・・・」
そこまで聞き取ると、横の存在感がふっと消えた。
気がつくとザアザア降りの雨の中、一人バス停で立ち尽くしていたという。
先客の顔も服装も、まったく思い出せない。
雨が止むまでホント落ち着かなかったよ。でも逃げ出すのも悪い気がしてなぁ。
そう彼はぼやいていた。
山にまつわる怖い話26