知り合いの話。
山中の道路で、舗装改修の仕事をしていた時のこと。
アスファルトにカッター入れの線を打っていると、行く手の道上に何か見えた。
黒い染みの真ん中に、汚れた毛皮と真っ赤な物がぶち撒けられている。
狸か何かの轢死体だった。
可哀想に。掃除しておかないとな。そう思いながら車に戻る。
しばらくして火箸と土嚢袋を手に帰ってきた彼は、思わず目を疑った。
道上の死体が、烏のそれにすり替わっていたのだ。
辺りには黒い羽根が散らばっている。
鳥じゃなくて四足の生き物だと思ったんだが、見間違えたか?
そんな筈はないがなぁ。不審がっていると、携帯電話に着信があった。
仕事の電話だ。二、三分ほど段取りの打ち合わせをして、通話を終える。
携帯を収めて顔を上げると、再び目を疑う羽目になった。
カラスの死体が消えて無くなっている。道に残されているのは羽根ばかり。
ただ、死体のあった場所から道路脇の草叢へと、濡れた黒い筋が続いていた。
「それで考えたんだけどな。死体に化けて、死肉を食べに来る動物を狙うってモノが居たりするんじゃないか・・・ってね」
彼は私にそう言った後、
「ま、全部俺の勘違いだったってことも、十分あり得る話だけどな」
そう付け加えて苦笑いした。
山にまつわる怖い話27