へびがいる

とくに悪さをされたわけじゃないが、あまり体験したくなかった出来事。

その日は身内の誰かの法事だった。たぶん三回忌くらいだったと思う。
つつがなく終えてから、それじゃあちょっとごく身内だけで美味しいものでも食べに行くかってことで、駅前のホテルの中にある会席料理屋に行った。
そのあたりは海の景観が売りの観光地なので、そのホテルの客も中高年が多いことから、まあ田舎によくある旅館風を思わせる内装のホテルだった。

この会食は元々予定されてたので、窓から市街地が見下ろせるお座敷に通された。
料理が運ばれてきてみんな和気藹々と食べていたが、俺は続けて出てきた、とろろを使った何かと茶碗蒸しを途方にくれて見つめていた。
俺はとろろと茶碗蒸しが食べられないんだよバーチャン(‘A`)

「あーやだなー」と思っていると、仲居さんにしてはきれいな黄色の着物を着た上品な感じのするおばさんが、楚々とお座敷に入ってきて部屋の隅に座った。
俺はただ「誰だろう」と思っただけで、ほとんど気にすることなく再び途方にくれていたのだが、そのとき1歳半~2歳?くらいだった従姉の子どもが火がついたように泣き出した。
全員こんなΣ( ゚д゚ノ)ノ感じで驚いてそちらを見ると、その子は部屋の隅を指して泣きじゃくっていた。

「へびがいる」と言って。

その場にいた10人程度がみんな驚いただろうが、俺はそれ以上にギョッとした。
それはさっき着物のおばさんが座ったところで、その子が指差す先には誰もいなかったからだ。

流石にその席で言うには気が引けたので、帰りの車の中でそのことを親に告げた。
車の中は一瞬恐慌状態になったが、ビビリの家系なのでみんな「気のせい」として忘れることにした。

あんま怖くないけどその時はぞっとした。

ほんのりと怖い話36

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