未来人

大した話じゃない上に長くて面白くもないかも知れんけど、思い出したんで。

本家の爺さんが亡くなるちょっと前に「俺は未来人見た事があるんだよ」みたいな事を話してた事があった。
もういい年だったからみんなも「ぼけた?」とか思ってたんだけど、ぼけるほど耄碌もしてなかったし亡くなる前とはいえ、元気だった。
大体死因心筋梗塞だったしな。

で、特に誰も相手しなかったんだけど、その時の俺はまだ子供だったし、言うなればお爺ちゃんっこだったからそれからしばらくしてから聞いてみたんだよ。
未来人の話を。

爺さん曰く
・子供の頃に近所で一人で遊んでた時に会った。
・服装も髪型もやけにハイカラだった。
・カメラを携帯しててそれであたりを撮影してた。
・初対面の爺さんを「君は●●だね」と言い当てた。
って事らしい。

俺も子供の頃聞いた話だからはっきりとは覚えてない。
で、別に未来人だって明言したわけでもなくて爺さんはその格好と、カメラと自分の事を知ってたって事をあわせて、とにかく得体の知れない人だと思ったらしい。

それが時が経つにつれて、その未来人みたいな服が流行って当時はなんだか分からなかった黒い塊が「カメラ」だって分かって、それで何となく未来人なんじゃねえかと思ったそうだ。
(爺さん子供の頃=大正初期、爺さん未来人だと思い始める=昭和後期)

その時は俺も爺さんスゲー、とか思ったけど、特に予言とかそういう関連の話がなかったからちょっとがっかりしたりしてたんだけど。
当時心霊写真とか予言とか流行ってたからね。
それから数年経って、爺さんは亡くなった。

そんなことすっかり忘れて十数年後。
今度は婆さんが亡くなった。つまりあれな、爺さんの奥さん。
うちの本家はスゲー田舎にあって、歴史もそこそこ。
かといって名のある家系というわけでもない。

だから●●家、みたいなのも婆さん死んだら終わりかなーくらいの微妙な家柄だった訳さ。
そんな中で婆さんが亡くなって、それじゃまあ、色々片付けちまうかみたいな事になったんだよ。

本家の屋敷ってのが築百五十年くらいで、訳のわからんものがやたらあったんだ。
爺さんも婆さんも死んじまったし、良い機会だろって事で。
(屋敷はそれくらいだけど一族的にはもっと古い)

婆さんの葬式も終わって、めいめい屋敷とか蔵の片付けしてた。
そしたら出るわ出るわ、無銘の日本刀やら、掛け軸やら壺やら。
で、これがまた尽く二束三文の骨董的価値もないがらくたばっか。
もう蔵ごと捨てたいくらいのよくわからんもの。
ここでお札の貼られた木箱でも出てくれば面白かったんだけど、そんなものはどこにもなかった。桶ならあった。何故かたくさん。

で、屋敷の方を片付けてたら爺さんと婆さんの部屋からアルバムがごっそり出て来たんよ。
結構な量で。
それが長男家、次男家、みたいにまとめられてた。
爺さんの子供は兄弟おおくて、兄弟それぞれのアルバムとして作ったっぽかったんだけど、次男以下、家庭を持って本家を出たあとでも、各々の家庭の写真を本家に送ったりしてたので、それを爺さんたちがアルバムにまとめてたらしかった。

俺の家のアルバムも勿論あった。
まだ若い親父とガキのころの俺の写真とかたくさんあった。
というかそれがほとんどだった。
写真って小学生くらいまでしか撮らないじゃん。
家族でとかだと。

でまあそんなろくに記憶もないレベルの子供のころの写真をパラパラみてたんだけど。案の定後半からなにも綴じられてない。
こんなもんだよなー、とか思って最後までめくってくと最後の方のページから白黒の写真が出てきた。

俺が写ってる写真はもれなくカラーだったから親父のかな、と思ったんだけど親父の写真は前半に綴じられてた。
大体これ親父とは似ても似つかない。誰だよ。
念のため親父に聞いてみるも「知らん」の一言。
裏書きもない。

その出てきた写真には、黒っぽい細見のコートを着て、少し長めでゆるいウェーブがかった髪をした(一族にしては)背の高い、男だか女だかわからん奴が、一眼レフを構えているのが写ってた。

なんだろう、っていうか誰だろう、と思って親戚連中に聞いて見るも誰も分からない。
分からないっていうか心当たりすらない。
唯一、手伝いに来てた近所の婆さんが「こらぁ○○んとこの近くでねぇか」っておぼろげに場所の特定してた。
場所はいいよ、誰なんだよ。

結局誰かの写真が紛れ込んだんだろうって事でその場はおさまった。
だけど、何となく違和感があったんだ。既視感というか、そんなのが。

で、思いだした。爺さんの未来人の話。
確かにカメラ持ってるし、時代は分からないけど服装もなんかシュッとしてたし、これが未来人じゃね?と。

でもその未来人の詳しい話聞いたのは俺くらいだったから「これ爺さんの言ってた未来人だよ」とか言える筈もなく。
一人で「ああ、爺さんの言ってた事は本当だったんだな」とか納得してた。

…んだけど。
また最近になってこの話を思いだして、もやっとした。

まず第一に「写真に写ってたのは結局誰なのか」
未来人云々はさておき、葬式で集まるレベルの親戚に聞いても手がかりなし、心当たりなしというのがよく分からん。
一族の人間ならわからないってことはないだろうと思うんだが。

第二に「なんでうちのアルバムに入ってたか」
仮に一族だとしたらまぎれても不思議じゃないけど、まるで無関係の人間だったら?
なんでわざわざうちのアルバムに? 俺が未来人の話を聞いたから爺さんが入れた?
なら話した時に見せてくれよ。

第三に「仮にこれ未来人だとして誰がこれを撮ったのか」
爺さんは「未来人が写真を撮ってた」とは言ってたけど「未来人の写真を撮った」とは言わなかったし、そもそも爺さんの子供の頃に個人用のカメラなんてないんじゃなかろうか。
まして一眼レフ。

他にも仮にこれが爺さんの言う「未来人」だとしても、俺から見たら明らかに昭和中期くらいの「過去人」なんだよね、とか。写真白黒だし。

700 :ID:+vP6eSK50

>>698
未来人の写真、スキャンしてうp!

701 :ID:xpu7qp0Z0

>>700
未来人つか昭和モダンな感じなんだけどな。
俺らから見たら本当に普通の古い写真。
親戚に該当する人間もいないってことと
爺さんの話がなかったら本当にただの写真だったな。

一回携帯で撮ったけど消しちゃって手元にないから本家また行ったらとってくるよ。まだあるはずだし。

702 :ID:XGHMSaHS0

うーんすっごく面白いお話。
それで、考えたんですけど、いくら未来人とはいっても極力、現代の人間に似せた服装で『変装』して観光なり調査なりするのでは、と思った次第です。
ただ、遠い未来からくるとなると時代考証に完璧にあった服の再現っていうのは、かなり詳しい人間じゃないと無理だと思うのですよ。

たとえば、時代劇の水戸黄門。
あれも普通の人から見れば、江戸時代の庶民的な服装に見えるのですが、現代の感覚でいえば、いい年こいてぴっちりポマードで固めた七三分けでビジネススーツ着てるような状態らしいです。

つまり、時代をあわせたつもりだったけど、ちょっと時代を先取りした昭和のモダン風な格好になってしまっていた、と。

703 : ID:BnXOLj690

ケネディ大統領だかのパレードの写真に現代風の若者が写ってる、彼はタイムトラベラーか?
みたいな話題があったけど結局その時代にもあった服だった、というオチがついた。

704 : ID:aRqAdWEw0

大正時代に眼レフ持ってたら好奇の対象だろうな

705 :ID:aRqAdWEw0

念のため調べてみたら一眼レフ自体は1933年(昭和8年)にイハゲー社からベスト版で発売されているが、ペンタプリズムがついて今のような形になるのは1949年のコンタックスSまで待たなければならない。

706 :ID:SH3WD+zaO

最近わけわからん服装の若者が多いけど、あれ未来人だったりする?

707 :ID:aRqAdWEw0

なんていうか、よそ行きと言う概念が極めて希薄になりつつあるようだね。

708 :ID:Is6dCwRG0

まあ写真うpするまで信じないけどね

709 :ID:XHgr1qgx0

>>708
写真うpされても信じないでしょ?
うpされた写真見ても、未来人が写ってたかは分からないんだから。

710 :ID:zuh3FSf2i

まあ俺も書いておいてなんだけど、信じてないつか、話半分で、みたいなところはある。
写真はいつ誰を写してるのかは分からんけど、間違いなく写真は撮った当時にそこに存在した人間が写ってるだけの写真だと思ってるし。

でもそこに写ってるそれが大正初期に爺さんのところに来た未来人とやらなら面白いなとは思ってる。
にしちゃあ昭和中期→大正初期とか近距離な未来人だけどな。目的もわからんし。っていうか誰なんだ。

不可解な体験、謎な話~enigma~ 70

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