五つの木

同僚の話。

消防団で行方不明者の捜索に駆り出された時のこと。

自殺の可能性があるので、急いでくれとのことだった。
皆で探す場所の分担を決め、彼は先輩団員とともに裏手の山の捜索になった。
出かけようとする彼らを団長が呼び止め「五つの木」を見てきてくれと言った。
五つの木とは何か彼は尋ねたのだが、先輩は答えてくれなかったらしい。

山に入ると、先輩は迷わず足を進め出した。
やがて開けた場所に出たが、そこの真正面の大木に何かが二つぶら下がっていた。
まだ新しい死体と、半ば白骨化した腐乱死体だった。

混乱している彼に先輩は教えてくれた。
自殺者はなぜか決まってこの木で首吊りをするのだという。
これまでに最大、一度に五人もの死体がぶら下がっていたことがあり、それで「五つの木」と呼ぶのだそうだ。

ぶら下がっていたのはその時の行方不明者ではなかった。
幸いにも、別の場所でまだ生きているところを発見された。
彼らが見つけた二遺体の身元が判明したかどうかは知らないそうだ。

山にまつわる怖い話4

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