友人の話。
彼は小さい頃、よく実家の裏山にカブトムシを取りに行っていたそうだ。
目星をつけた木を蹴飛ばし、落ちてくる虫を捕まえていたのだという。
ある夏の日、いつもみたく木を蹴飛ばしていると、ドスンと異様な物が落ちてきた。
大きさは、小学生だった彼の弟くらいもあったらしい。
黒光りする逆刺がびっしりと生えた足が、数え切れないほど蠢いていた。
自分では起き上がることができないようで、足をわさわさ暴れさせている。
慌てて逃げ帰ると、祖父にひどく怒られた。
何の申し訳も無しに古い木を蹴飛ばすから、そんな目に遭うのだと。
以来、彼は木を蹴る前に「ごめんね」と謝るようにしたのだという。
山にまつわる怖い話6