友人の話。
週末に軽く山歩きを楽しんでいた時のこと。
山道の傍らに、一人の少女が背を向けてしゃがんでいた。
草むらに手を突っ込んで、何かを探しているらしい。
何してるんだい? お父さんかお母さんはどこ?
気になって声をかけたが、少女は彼をじろりと見やり、すぐ目を下に戻した。
小さな石コロを拾い上げて、ひょいと口の中に放り入れる。
唖然とする彼の前で、ぼりぼりと音を立てて、その子は石を噛み砕いた。
二、三回ほど噛むとごくりと呑み込んでしまった。
引き続き石を拾い始めた少女を見て、彼はひどく動揺したという。
「それじゃあ」と別れを告げ、できるだけ足早にその場から逃げ出した。
少女が石を噛み砕く音は、しばらく彼の耳に届いていたのだそうだ。
山にまつわる怖い話8