知り合いの話。
彼女が友人の家族と山菜取りに出かけた時のこと。
里山を下る帰り道で、奇妙な足音がついて来たのだという。
スタッスタッと草履で歩くような音がするのだが、足音の主は見えないのだ。
よほど上手く隠れているらしい。
一体どこからついて来ていたのか分からなかった。
こちらが足を速めると足音も早くなり、緩めると間延びした。
一定の距離を保って、絶対に離れなかったそうだ。
そのうちに彼女は痺れを切らして立ち止まり、後ろに向かって叫んだ。
隠れていないで、出ておいで!
一瞬の間が有り、やがて足音だけが、皆の横をスタスタと駆け抜けていった。
目には何も見えなかった。
隠れていたんじゃなくて、本当に本体がなかったんだ。
皆は呆れて見送ったのだそうだ。
山にまつわる怖い話11