友人の話。
山深い峠道を車で走っていると、行く手の路上に何かが蹲っていた。
速度を落とし近寄ると、それは猿の赤子だった。
クラクションを鳴らしても逃げようとしないので、追い払おうと外に出る。
彼が近づくと、猿はすっと立ち上がった。
途端、違和感を覚えたという。
猿の身長が伸びたような気がしたのだ。
困惑する彼を尻目に、猿はスタスタ歩き出した。
赤子だった猿は、いつの間にか子猿ほどになっていた。
間違いない、この猿は見る間に成長している!
更に二歩ほど進むと、猿は立派な成猿になった。
もう二歩進むと、背中が曲がり、体毛も白くなった。
どうやら老猿になったらしい。
尚も歩き続け、骨と皮だけになった猿は、道路を渡りきる寸前くずおれた。
いきなりの風で、猿の身体はそのまま風化したように吹き飛ばされた。
カランと骨が落ちるような音がしたが、それもすぐに風に散り散りになる。
後には白い毛が数本、路上に残されただけだった。
山にまつわる怖い話11