奇妙な獣の死体

知り合いの話。

彼の実家では、年に何度か持山の清掃をしている。
作業中、奇妙な獣の死体を見つけたことがあるそうだ。

その死体は山の麓から里へ下りる道の、側溝の中に落ちていた。
息絶えてから間もないようで、まだ虫も集っておらず死臭も強くなかった。
黒い濡れたような体毛から、最初は鼬だと思ったのだという。

これも何かの縁だ、埋めてやろう。そう思い、火箸で摘み上げた。
鼬ではなかった。尻尾がやけにずんぐりとしており、頭が異様に大きい。
ぱっくり開いた口腔には小さな歯が並び、目はどこにも見えない。
まるで、毛の生えた大山椒魚に見えた。
短い手足には、猫のような鋭い爪が生えていた。

そのまま林の中へ埋めたそうだ。
彼曰く、こういった奇妙な獣は時たま見られるが、その大抵は死体なのだという。

山にまつわる怖い話11

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