私の体験した話。
学生時代、仲間数人で登山に出かけた時のことだ。
宿泊には小洒落たペンションを利用した。
幹事曰く、オフシーズンで安かったのだそうだ。
山は楽しいものだったが、ペンションが異様に湿っぽかったのには閉口した。
地図など紙類が、すぐに水を含んでヨレヨレになる。
ペンションの主人も気にかけているようで、換気が良くなるよう何度も改修をしたのだが、改善されていないのだと言う。
仕方なく黴が生えると困る物は、外の倉庫に保管しているのだと。
不思議なことに、そこはカラッと乾いているのだそうだ。
帰り道、仲間の一人がポツリと言った。
「あそこの湿気は取れないだろうな。あのペンション、人より大きな蛞蝓が居座っていたんだ。黒いのに目玉だけが白くて、廊下とか居間をのったりと這い回ってた。なぜか俺だけにしか見えていなかったみたいだけど。あれはおそらく、あの山小屋の主なんだろうな」
彼が本当のことをいっていたのかどうか、確認する術はない。
山にまつわる怖い話11