先輩の話。
インターハイ大会が北海道で開かれた時のこと。
彼は天気図担当の選手として、大会に参加していたという。
大会最終日、只一人テントに忘れ物を取りにいった。
誰もいないテント村を小走りに進んでいると、人影に気がついた。
見知らぬ女性が一人、設営地の外れに佇んでいる。
ちょっと言葉で表現できない、変わった暗い色の服装をしていた。
挨拶して通り過ぎようとすると、彼女はいきなり「ぺっ!」と口から何か吐き出した。
ギョッとする彼をまったく気にも留めず、女性は悠然と森の中へ消えた。
恐る恐る、彼女が吐き出した物を見てみた。
何かの動物の毛玉のようだ。
大きさは違うが、まるで梟のペリットのようだったという。
皆に合流してから話したが、誰も取り合ってくれない。
ただ部長だけが「それってカムイかもな」と相手にしてくれたそうだ。
山にまつわる怖い話12