お馬さん

知り合いの話。

家族でキャンプに行った時のこと。

カレーに入れる野菜を刻んでいた彼女は、娘の姿が見えないことに気がついた。
立ち上がって名前を呼ぶと、少し離れた木立の間から娘が出てくる。

一人で奥に行っちゃ駄目だよ!と叱ると、娘はこう答えた。
「お馬さんに人参上げていたの」

見ると、娘は小さな手に人参を持っていた。
人参には大きな歯型が残されていたが、彼女にはそれが馬のものかどうか皆目わからなかった。

娘によると、頭上の葉々の中から長い首を伸ばしてきた馬がいたのだという。
首が長いのならキリンさんじゃないの?と尋ねながら、我ながらおかしなことを聞いているなと、ぼんやり思ったそうだ。
しかし、娘は頑固に「あれはお馬さんの頭だった」と繰り返す。

彼女の娘が人参を食べさせたものは、一体何だったのだろう。

山にまつわる怖い話12

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