私有地の竹薮

友人の話。

彼が通っていた小学校は小高い山の上にあった。
きちんとした登校路はあるのだが、彼の家からはかなりの遠回りになるので、一人の時はよく私有地の竹薮を抜け道として使っていたのだそうだ。

ある日、怖い顔をした小父さんに捕まった。
その竹薮の持ち主だという。
勝手に他人の土地に入ったことをこっ酷く怒られてから開放された。
その際に言われた。
「もうここを通るんじゃない。取られるぞ!」

怒られて落ち込んでいた時はよくわからなかったが、家に帰って冷静になると叔父さんの言葉がひどく気になった。
一体、何が何に取られるというのか。

しばらくしてから、学校側から「登下校の時は私有地に入らないように」という注意が出された。
あの家の人から学校に苦情と注意があったらしい。
見張り役の教師も立つようになり、さすがの彼も竹薮には入らなくなった。

高校生になって友人の家に遊びに行った折にふと、この体験を話すことになった。
すると、友人の父親から不気味なことを聞かされた。

「あそこの竹薮ってね。これまでに何人か、子供が消えているんだよ。私が聞いた一番古い話は戦前のことだけど、多分その前もあったんだろうね。私らの代じゃ、結構有名な話だよ。戦後、竹薮があそこの人に買われてからは何も起こっていないみたいだけど」

現在、小学校付近は開発が進み、あの竹薮も既に住宅地となっている。

山にまつわる怖い話19

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