鼾の主

知り合いの話。

持ち山の手入れをしていると、おかしな音を聞いたという。

 グ・・・ググゥ・・・グゴォ・・・

手を止めて耳を澄ます。生き物の鼾のようだ。正体はわからない。
出来るだけ音を立てずに、鼾の主の姿を探すことにする。
右手奥の少し開けた場所で、どうやら目当ての相手を見つけた。
自分の目を疑う。

そこで気持ち良さ気に鼾をかいていた者。それは太い丸太だった。
端面には年輪がある。枝を落とした切断痕もちらほら見受けられる。
それだのに、腹に当たる部分が微かに上下している。生きている。

起こしたりするようなことはせず、静かにそこを立ち去ったそうだ。

山にまつわる怖い話23

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