優しい叔父さん

二ヶ月ほど前に親戚が亡くなった。
本屋で立ち読みしてたら、突然倒れてそれっきり。脳の中の血管が切れたのが原因だとか。

俺が子供の頃から優しくしてくれた人で、よく遊園地とか映画とかに連れて行ってもらったりしてた。
曽祖父の葬式の時に、父と親しくなったらしい。
生前、親類が集まる席で「微妙に遠い親戚」と冗談しかめて吹聴していたのだが、

完全な「赤の他人」だった。

調べてみると俺の家族の家系(父方・母方)どころか、双方の親戚の親戚にすら該当しない人だった。
つまり、曽祖父の葬式に「親戚」を名乗って上がりこみ、俺の家族と仲良くなったのだ。
別に両親や親類から金を借りたり、何かを売りつけたりといった事はなかったようだが・・・・・・
むしろ俺個人としては、好印象な記憶しか残っていない。
(特別に親しい関係を持っていたのはうちの家族ぐらいだったみたい)

彼が一体どこの誰で何の目的で親戚に成りすましたのか、まったく分かってない。
遺品にも手掛かりはなく、とりあえず警察に相談したが、具体的な「被害」がないため事件として取り扱う事は難しいのだそうだ(とりあえず身元は調べるらしいが、これも難しいだろうと言われた)

一応、うちの家族で葬式を出した。他の親戚は気味悪がって来なかった。
まったく血のつながっていない人と遊園地を巡っていたかのだと考えると、ゾッとするものがあったが、俺にとっては「優しい叔父さん」だったのは間違いない。

ほんのりと怖い話43

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