巻狩り

友人の話。

彼の義理の父親は猟が好きで、地元の猟友会に所属している。
ある時、その猟友会主催で巻狩りが催された。
巻狩りというのは、多勢の猟師が狩り場を四方から取り囲み、獣を追い立てて捕らえる狩りなのだそうだ。

義父は追い立てられた獲物を仕留める側だった。
息を殺して待つことしばらく。
やがて目の前の繁み奥から乱雑な音が近づいてきた。
猟銃を構え待ち構えていると、耳元の無線が叫ぶ。

 撃つな!逃げろ!!

慌てて銃を下ろすと、繁みからは見覚えのある人影が数人飛び出した。
仲間の勢子(追い立てる側)たちだった。
口々に「逃げろ!」と叫び、義父を引きずって走り出す。
何から逃げているのか、皆目見当もつかない。

結局、その時山に入っていた全員が、麓の駐車場まで走って下りることになった。
責任者が狩りの中止を宣言し、その場でお開きとなる。
青い顔をした者に事情を聞いたが、首を振るばかりで何も答えない。

一体何があったのか、今に至るも教えてくれないという。

山にまつわる怖い話12

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