足止め神社

知り合いの話。

彼の実家の近くに小さな山があり、そこには小さな神社がある。
今にも森に埋もれそうな寂れた神社なのだが、なぜか礼拝客は意外と多い様子。
先日里帰りした折にふと思い出し、何の気なしに足を伸ばしてみた。

一歩境内に足を踏み入れギョッとした。
境内中の木という木に、履物の類が打ち付けてあったのだ。
それこそ数え切れないほどの、靴やサンダルといった履物が。
異様な雰囲気に堪らず、逃げるようにして即帰ったという。

後でその手のことに詳しい人に聞いてみたのだが、その神社は俗に足止め神社と呼ばれ、ある筋ではかなり有名なのだそうだ。
そこで履物を使って呪をかけると、その履物の主は旅行に出たり引っ越したりといった行動が取れなくなってしまう――文字通りの足止めだ。

彼が見た中には、幼子の靴も数多あったらしい。
一体どんな事情があったのか。考えているうち鬱になったという。
「現代でもああいうことを信じてすがる人が、あんなに大勢いるんだな」
彼は最後にぽつりとつぶやいた。

山にまつわる怖い話19

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする